セキュリティチェックシートとは?届いたときの見方・よくある項目・対応の流れ

この記事でわかること

  • セキュリティチェックシートとは、取引先が自社のセキュリティ対策状況を確認するための質問票
  • 届いたらまず①期限の確認 ②設問全体の把握 ③証跡提出の要否を確認
  • 設問は大きく7カテゴリに集約でき、対応は5つのステップで進められる
  • すべてを「はい」にする必要はない。大事なのは正直に現状を伝えること

ーー”取引先から突然「セキュリティチェックシート」が届いた。何ページもある設問に、回答期限まで付いている。何をどう答えればいいのか、そもそもこれは何なのか・・・。”

この記事は、チェックシートが届いて「まず何を知ればいいか」を整理するための入門記事です。専門知識がなくても読める構成にしていますので、全体像をつかんだうえで、具体的な対応は各テーマの詳細記事で深掘りしてください。

セキュリティチェックシートとは何か

セキュリティチェックシートとは、取引先が自社に対して、情報セキュリティ対策の実施状況を確認するために送付する質問票のことです。

正式な名称が統一されているわけではなく、「セキュリティアンケート」「情報セキュリティ確認書」「セキュリティ調査票」など、取引先によって呼び方はさまざまです。形式もExcel、Webフォーム、PDFなど多様ですが、聞いていることの本質は共通しています。

サプライチェーン全体でのセキュリティ管理が重視される中、中小企業にもセキュリティ確認が及ぶ場面は確実に増えています。チェックシートの回答内容は、取引開始・継続の判断材料として扱われることがあります。

ただし、すべての設問に「はい」と答える必要はありません。むしろ虚偽の回答というのは最も避けるべきです。 大事なのは正直に現状を伝え、必要に応じて改善の意思を示すことです。この点は記事の後半でも繰り返しお伝えしますが、最初に知っておいていただきたいポイントです。

なぜ取引先がチェックシートを送ってくるのか

では、なぜ取引先は自分の会社にチェックシートを送ってきたのでしょうか。

ここを理解しておくと、設問の意図が読み取りやすくなり、回答の方針も立てやすくなります。背景には、大きく2つの理由があります。

理由①:サプライチェーン攻撃のリスク

サイバー攻撃者は、セキュリティが強固な大企業を直接狙うのではなく、取引先である中小企業を踏み台にして侵入する手法を取ることがあります。IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第3.1版」でも、サプライチェーンを構成する中小企業が攻撃の足掛かりにされるリスクが明記されています。

また、経済産業省の「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver3.0」では、重要10項目の一つとして、ビジネスパートナーや委託先を含めたサプライチェーン全体でのセキュリティ対策推進が求められています。取引先がチェックシートを送るのは、こうしたリスク管理の実践の一環です。

つまり、チェックシートは取引先が「御社のセキュリティに問題がないか」を確認するための手段であると同時に、取引先自身がサプライチェーン全体のリスクを管理するための手段でもあるのです。

なお、サプライチェーン攻撃の仕組みと、中小企業に問われる説明責任については、「サプライチェーン攻撃とは?取引先からチェックシートが届く理由と、 中小企業が問われる説明責任」で詳しく解説しています。

理由②:法令上の義務

個人データを取り扱う業務を委託する場合、個人情報保護法やそのガイドライン上、委託元には委託先の安全管理状況を確認し監督する義務が課されています。チェックシートは、この確認を行うための手段の一つです。

すべてのチェックシートがこの法令を直接の根拠としているわけではありませんが、個人データの受け渡しが発生する取引関係では、この法的背景があることが多いです。

※参考:個人情報保護法25条(委託先の監督)。個人データを取り扱う場合に適用される法的根拠です。

補足:認証制度が背景になる場合も

なお、取引先がISMS(ISO 27001)やプライバシーマーク等の認証を取得している場合は、認証の維持要件として委託先の管理が求められるため、チェックシート送付の背景になることがあります。

チェックシートでよく聞かれる項目の全体像

チェックシートを初めて見ると、設問の多さに圧倒されるかもしれません。しかし、聞かれていることを整理すると、実は大きく7つのカテゴリに集約されます。

① 組織体制・方針

情報セキュリティの責任者は誰か、基本方針は策定しているか、といった設問です。取引先は「この会社は組織としてセキュリティに取り組んでいるか」を確認しています。

② アクセス管理

誰がどのデータにアクセスできるか、退職者のアカウント管理はしているか、といった設問です。「必要な人だけが必要な情報にアクセスできる状態か」を確認するために重要なものです。

③ 技術的対策

ウイルス対策ソフト、ファイアウォール、OSやソフトウェアの更新状況などです。「基本的な技術的防御ができているか」の確認です。

④ データ管理

個人データや機密情報の保管場所、バックアップの有無など、「大事なデータがどこにあり、守られているか」を確認しています。

⑤ 委託先管理

外部サービスやクラウドの利用状況、委託先の管理体制を問うものです。「さらにその先の取引先にもリスクが広がっていないか」を確認する設問です。

⑥ インシデント対応

情報漏洩等が起きた場合の対応手順、報告体制などで、「万が一のときに、迅速に動ける体制があるか」を確認しています。

⑦ 教育・研修

従業員に対するセキュリティ教育の実施状況を問う設問で、「人的なミスを減らす取り組みをしているか」の確認です。

これらのカテゴリは、IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第3.1版」が示す対策項目とも概ね対応しています。また、上記のうち個人データに関わる項目(特に②③④⑤)は、個人情報保護法のガイドラインでも安全管理措置として求められている対策です。

※参考:個人情報保護法23条(安全管理措置)。個人データを取り扱う場合に適用される法的根拠です。

各カテゴリの代表的な設問と具体的な書き方については、取引先セキュリティチェックシートの頻出質問20選で詳しく解説しています。

チェックシート対応の全体ステップ

全体像がつかめたら、次は「どう進めるか」を考えます。
対応は大きく5つのステップで進められます。

ただし、その前に対応すべき点があります。

届いたらまず対応すべき3つの重要事項

チェックシートが届いたら、対応の全体ステップに入る前に、まず以下の3点だけでも早急に確認してください。

① 回答期限を確認する
いつまでに提出する必要があるか。期限によって対応の進め方が変わります。期限が1週間以内なら優先度を上げて取り掛かる必要がありますし、1か月以上あればじっくり進められます。

② 設問の全体像を把握する
設問数、回答形式(Yes/No、自由記述、選択式等)をざっと確認します。全部読む必要はありません。まずはボリューム感をつかみ、「自社に関係がありそうなカテゴリ」と「よくわからないカテゴリ」を大まかに仕分けるだけで十分です。

③ 証跡の提出が求められているかを確認する
回答だけでよいのか、裏付け資料(証跡)も一緒に出す必要があるのかで、準備の負担が大きく変わります。証跡の提出が求められている場合は、早めに準備に取り掛かる必要があります。

まずは上記3点を確認した上で、実際の回答に向けてのステップに進むことをお勧めします。

ステップ①:自社の現状を棚卸しする

設問に答える前に、自社がどんなセキュリティ対策を実施しているかを整理します。

「やっているがルール化されていない」「ツールは入れているが運用が曖昧」など、こうした状況を可視化するだけで、回答の方針が格段に立てやすくなります。

IPAが公開している「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」は、自社の状況を手軽に把握するのに役立ちます。また、当サイトでも超簡易セキュリティチェックを用意していますので、まずはそちらから試してみてください。

ステップ②:回答を作成する

設問の意図を読み解き、自社の実態に即した回答を作成します。「はい」と書いていいか迷う設問への対処法や、「いいえ」の場合にどう書けば取引先に伝わるかなど、回答作成のポイントがあります。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

ステップ③:証跡を準備する

回答の裏付けとなる資料(証跡)を準備します。「証跡」とは、チェックシートの回答が事実であることを示す裏付け資料のことです。

取引先への提出が不要な場合であっても、確認のためだったり、後日問い合わせがあった場合の対応のためなど、参照する機会は意外とあります。

どんな種類の証跡があるか、ない場合はどうするかについては、以下の記事で詳しく解説しています。

セキュリティチェックシートの”証跡”とは?提出を求められたときの考え方・具体例・ない場合の対応

ステップ④:提出前の最終確認

提出前に、回答と証跡の整合性を確認します。よくあるのは、回答では「全社導入済み」と書いているのに、添付した証跡が一部端末だけのスクリーンショットになっているケースです。こうした矛盾は、取引先に「回答の信頼性に疑問がある」と判断される原因になります。

ステップ⑤:提出・差し戻し対応

件数自体は多くないと思いますが、提出後に「不十分」だとして差し戻されることもあります。

この差し戻しは「全否定」ではなく、「もう少し補足してほしい」というサインであることが多いようです。差し戻しへの対応方法は、以下の記事で詳しく解説しています。

セキュリティチェックシートが差し戻された!よくある原因と再提出で通すための5つのポイント

補足

各ステップは必ずしも順番通りに進むわけではありません。証跡を準備しながら回答を修正することもありますし、棚卸しの結果を見て対応の優先順位が変わることもあります。

また、すべてを一度に完璧にする必要はありません。IPAのガイドラインでも、中小企業が段階的に対策を進めることが前提とされています。まずはできるところから取り掛かり、次回以降の対応で改善していくというアプローチも有効です。

チェックシート対応で避けるべき3つのこと

対応の全体像がつかめたところで、「これだけは避けてください」という3つのポイントをお伝えします。

NG①:全項目を「はい」にしてしまう

「取引を切られたくない」という気持ちから、実態に合わないにも関わらず「はい」と答えたくなる場合もあるかもしれません。しかし、取引先によっては提出後にヒアリングや実地確認を行うことがあり、そこで矛盾が発覚すれば、かえって信頼を損ないます。

正直に「いいえ」と答えたうえで、改善の意思を示す方が、長期的には取引先との信頼関係を守ることにつながるのではないでしょうか。

NG②:内容を確認せずに提出してしまう

設問の意図を読み違えたまま回答すると、差し戻しの原因になります。特に「アクセス制御を実施していますか?」「インシデント対応体制はありますか?」といった設問は、言葉の印象と取引先が期待する対策のレベルにギャップが生じやすい箇所です。

回答前に、設問が「何のリスクを確認しようとしているのか」を考える習慣をつけると、回答の精度が上がります。

NG③:期限を過ぎても放置してしまう

未回答は、取引先にとって「セキュリティ対策に無関心」と映る可能性があります。回答が不十分であっても、未回答のまま放置するより、現時点で回答可能な範囲を示す方が望ましい場合が多いです。

期限に間に合わない場合は、取引先に事前に連絡し、期限延長を相談するのも一つの手です。「確認に時間がかかっており、○日までに提出予定です」と伝えるだけで、印象は大きく変わります。

法的リスクについて

上記のNG①に関連して、個人情報保護法やそのガイドラインでは、事業者に対して安全管理措置を講じることが求められています。実態と異なる回答をした状態でインシデントが発生した場合、法的な責任や契約的な問題に発展する可能性があります。

特に経営層の法的リスクについては、セキュリティ対策に消極的な経営者が問われる責任とは?で整理しています。

対応に困った場合の相談先の選び方

「自社だけで対応できそうにない」と感じたら、外部の力を借りることも選択肢です。相談先にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴が異なります。

選択肢①:社内のIT担当者・情シス部門

社内にITに詳しい人がいれば、まずはその人に相談するのが手軽です。ただし、チェックシートの設問はセキュリティの技術面だけでなく、組織体制や法務的な観点も含まれるため、IT知識だけではカバーしきれない場面もあります。

選択肢②:セキュリティベンダー・ITコンサル

体系的な支援が受けられます。費用体系は事業者によって大きく異なるため、事前に見積もりを取ることをお勧めします。製品導入を前提としたサービスもあれば、コンサルティングのみの支援を提供する事業者もあります。自社が求める支援の範囲と予算に合うかを確認することが重要です。

選択肢③:登録セキスペ(情報処理安全確保支援士)

サイバーセキュリティ分野の国家資格を持つ専門家です。登録者の多くは企業のセキュリティ部門等に所属していますが、中小企業向けに個別支援を行っている登録セキスペもいます。弊所もその一つで、行政書士の資格もあわせて保有しています。

まとめ

  • セキュリティチェックシートとは、取引先が自社のセキュリティ対策の実施状況を確認するための質問票
  • 背景にはサプライチェーン攻撃のリスクと、法令上の委託先監督義務がある
  • 設問は大きく7カテゴリに集約でき、対応は5つのステップで進められる
  • すべてを「はい」にする必要はない。大事なのは正直に現状を伝え、改善の意思を示すこと

提出期限が近い方へ

チェックシートの期限が迫っている方は、まずは無料相談でご状況をお聞かせください。登録セキスペ&行政書士が、回答の進め方から優先すべきポイントまで、30分で整理します。

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